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サラエボ,希望の街角

2011.06.21 22:46

 ちょっと前になりますが、ヤスミラ・ジュバニッチ監督の故郷サラエボを舞台にした映画「サラエボ,希望の街角」を観てきました。

Story> 客室乗務員のルナ(ズリンカ・ツヴィテシッチ)と空港管制官のアマル(レオン・ルチェフ)は、サラエボで同棲するカップル。ある日、勤務中の飲酒が原因でアマルが停職処分を受けてしまう。停職中にかつての戦友と偶然再会したアマルは、彼に触発されるままイスラム原理主義に傾倒していき…。

 ボスニア紛争から15年以上を経ても未だ紛争の傷跡が残るボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボのいまを、戦争や宗教問題を絡ませつつある恋人たちがたどる愛の行方と共に描き出した力作です。 
 客室乗務員のルナと空港管制官のアマルはサラエボで同棲している恋人同士。お互いに子供が欲しいと思っているが中々恵まれず、人工授精をすすめられている。
 ある時勤務中の飲酒が元でアマルは停職処になってしまう。そして停職中にイスラム原理主義者の戦友と偶然再会したことで、事態はおかしな方向へ。
 原理主義を疑問視しているルナはこの再会を警戒するのですが、アマルは彼が紹介した遠方でのパソコン教師の仕事を受けてしまう。実はそこは原理主義者のキャンプで、戻ってからのアマルはすっかり原理主義の思想に染まってしまっていた。

 何でもない日常を送っているように見えて、ボスニア・ヘルツェゴビナという国は、たった15年前まで酷い紛争の中にあった。1992年、ユーゴスラビア解体の中で独立を求めたクロアチア人(スラブ系・カトリック信徒)・ボシュニャク人(ムスリム)と、それを認めないセルビア人(スラブ系・ギリシア正教会信徒)との対立が原因で始まったボスニア紛争は、死者20万、避難民200万を出すという酷いものになった。紛争で生じた爪痕は、未だ癒えることなくこの国のあちこちに残っており、ルナとアマルも癒えぬ傷を抱えている。
 紛争中、ルナは目の前で両親を殺され、アマルは戦士として戦い同じく戦士だった弟を失っている。
 そしてもうひうとつ。
 この映画を観ていて、ボスニア・ヘルツェゴビナの遍歴を思った。東ヨーロッパとか旧共産圏という括りで捉えがちだが、つい100年ほど前まで、この国はオスマン・トルコの領土の一部だったのだということに今更のように思い至る。だからムスリムが多くいるのだし、そのあたりを理解していないとあのあたりの複雑さの本質を見誤りそうな気がする。
 私はムスリムの戒律の全てを否定的に見てはいません。例えば、非イスラム圏、特に欧米で批判されがちな女性の着用しているブルカについても、日本や欧米と違って乾燥した土地や日差しの強い地域が多いイスラム圏では女性の肌を守るという役割を持っている面もある。その地域の風土を考えることなくこちらの価値観を「正しいもの」とするのは、ちょっと強引な気がします。そもそも、肌を露出すれば女性が自立するわけでもないですからね。
 けれどもテトリスト育成や未成年者を含む一夫多妻制の容認など、原理主義者のしていることは、ルナと同じく理解出来ないし、受け入れられない。
 アマルは原理主義思想に染まってから、ルナの着た肩の開いたドレスに「露出度が高い」と文句をつけたり、彼女が友人と飲んでいるところに「女がひとりで出歩くにはもう遅い」と連れ帰ろうとしたり、更には不妊は「お前の信心が足りないからだ」とまで言うようになる。
 これら彼女の人格さえも否定するような言動に、ふたりの間に生じたひずみがどんどん広がってしまう。
 
 紛争中に占領され奪われたかつての家を訪れたルナとそこで暮らしている少女との印象深いシーンがあるんですが、そこから戻ったルナがアマルに問いかけた言葉が重い。
 「どうしてこんなことに?」
 それは、二人の現状のことを言っているようでもあり、またふたりをこんな風にしたそれまでの国の歴史を問うているようにも聞こえます。

 やがて、あれほど願っていた新たな生命がルナの中に宿ります。けれども彼女はもうアマルと共に歩んでいこうとはしない。アマルの「戻ってこい」という言葉に「あなたが戻って」と告げて。

 サラエボの「いま」を映した作品なのに、この街が歩んできた歴史を思わずにいられなかった。そしてこれからも続いていくルナ/サラエボの歩む先は、いったい何処にのびていくのだろうかと。
 何処とも知らない先に向かって、ルナは飛び立っていく。
 
 ルナ役のズリンカ・ツヴィテシッチがすごく美しかったです。あの美しさは、写真では伝わらないかも。新人さんだそうですが、ぜひ、動く彼女の姿を見てほしいです。
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夜長姫

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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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※たいして頭の良くない人間が無い知恵絞って書いております。無断転用等はご容赦くださいね。

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