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吉屋信子「わすれなぐさ」

2010.10.15 23:40
わすれなぐさ (吉屋信子乙女小説コレクション)わすれなぐさ (吉屋信子乙女小説コレクション)
(2003/02)
吉屋 信子嶽本 野ばら

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 「花物語」で有名な吉屋信子(1896~1973)の代表的少女小説。
 先日紹介した川端康成の「乙女の港」が上級生と下級生の「エス」の物語なら、こちらは級友同士の「エス」のお話です。
 最近、河出書房新社から文庫版が出ましたが、どうせならこの中原淳一オリジナル装幀復刻版で読んだ方が雰囲気が出るんじゃないかと思います。
 嶽本野ばらさんの解説付き。
 とある女学校。3年生の牧子は、風邪をひいて学校を欠席していた間のノートを貸してほしいと、クラスメイトの一枝に頼みます。一枝はクラスで一番の優等生で、生真面目な「硬派」の大将。それを、じっと見ている人がいました――華やかな「軟派」の女王・陽子です。彼女は牧子が、自分ではなく「硬派」の大将と話しているのが気に入りません。そこで、牧子を呼び止めて一方的に自分の誕生会へ来るようにと告げます。ところが牧子はそれを静かに断り、立ち去ります。その姿に、一枝に向けた敵愾心も相まって、負けず嫌いの陽子は何としてでも自分に靡かせてやろうと誓うのでした。
 陽子の誕生会に引っ張り出された牧子は彼女の我儘に散々付き合わされるのですが、陽子が付けていたわすれなぐさの香水の香りがしみ込んでゆくように徐々にその華やかな魅力に引き込まれます
 しかし、偶然陽子の家の前を通った一枝の姿を見ると共に何故か羞恥を覚え、陽子の元を去り一枝の後を追うのでした。
 その後、彼女の心は高飛車な陽子と模範生たる一枝の間で揺れ動きます。
 初めは、牧子を無視するどころかいっそう強引になった陽子にあれやこれやと振り回され、感化されていきます。夏に母が亡くなってからはその哀しみを忘れようとするかのように、陽子との交友は深まる一方。しかしある日、行き違いの続いていた牧子の弟が家出をしてしまい、なんと一枝によって保護され送り届けられるという出来事が起こり、自分の行いを恥じた牧子は、陽子に別れの手紙をしたためるのでした。
 その後、牧子は一枝との交友を深めるのですが、絶交状態になった陽子が気管支炎を患い療養所に入ることになり……

 読んでいない人もいると思うので、お話の概要はここら辺に留めておきます。終局は、川端センセイの「乙女の港」とほぼ同じ。三角関係の結末は、こういう形が好まれたのでしょうか。

 ところでこのお話、クラスメイト同士の「エス」というのがミソですね(と、こう書きつつ、同級生同士の関係もそう呼んでいいのか判断に悩んでいたりしますが。間違っていたらご容赦下さいませ)。
 「エス」というのは、大正・昭和期の女学生の間で流行した、上級生と下級生の緊密な交流のこと。あくまで親友以上の間柄、というもので、女性同士の恋愛関係であるレズビアンとは別のものです。
 そんな三人のねじれた関係を軸に、教室の中で蠢く「硬派」とか「軟派」といった派閥の牽制のし合いなどを読んでいると、当時の女学校の教室事情が見て取れるよう。女って、群れるといつの時代も変わらないなぁと思わずにいられません(笑)。
 因みに、主人公の牧子は、クラスでは「硬派」でも「軟派」でもない、個人主義の「中立派」。
 その「中立派」の代表格を、「硬派」の大将と「軟派」の女王が奪い合う三角関係なんですね。
 三人三様に個性的で素敵なんですが、いちばん心ひかれるのは、いけないと思いつつもやっぱり陽子です。華やかで高飛車で、近くにいると絶対迷惑確実なんですが(笑)。陽子が牧子を連れて横浜へ繰り出す場面があるんですけれど、帰りに乗った円タクの運転手に、陽子はなんと検問を突破させるんです(!)。当時としては(いや今でも)、とんでもない行いなんじゃないでしょうか。そんなことを平気でやってしまえる陽子の姿は、いっそ清々しいくらいです。母を亡くして深い哀しみにあった牧子がその魅力に取り憑かれるのも頷けます。
 
 この作品は、雑誌『少女の友』昭和7年4月号~12月号に連載されていて、その時の挿絵は大正ロマンの代表的存在の高畠華宵。河出書房新社から出ている
「女学生手帖」 に、その挿絵が数点(カラーで!)出ているのですが、すごく妖しくていいですよ。特に、陽子が(笑)。
 その後、昭和15年にこの本の底本となった中原淳一装幀の単行本が出たんですね。
 どちらの絵も、吉屋信子の古風で美しい文体で綴られた少女たちの三角関係の物語に花を添えています。
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夜長姫

Author:夜長姫
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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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※たいして頭の良くない人間が無い知恵絞って書いております。無断転用等はご容赦くださいね。

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