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宮塚文子「バービーと私」

2011.08.11 23:52
バービーと私―着せ替えドレスを作り続けた半生記バービーと私―着せ替えドレスを作り続けた半生記
(2011/04)
宮塚 文子

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 アメリカのファッションドール、バービーが、実は日本で誕生していたことをご存知だろうか?
 本書はその誕生からバービーに関わり続けた宮塚文子の半生記。
 誕生秘話やカラーページに収められたファースト・バービーのドレスコレクション、バービーを通して見る開発当時の日本のメーカーや工場事情などなど、ファンはもちろんそうではない人にも興味深い内容になっています。
 1859年にマテル社から発売され大ヒット商品となったバービーは、マテル社の創始者のひとり、ルース・ハンドラーがスイス旅行で娘のバーバラへのお土産に購入したドイツのファッションドール「リリ」(口絵に写真が載ってます!)にインスピレーションを得て造られたファッションドール。
 当時はアメリカよりも日本の方が人件費が安く、そして繊維産業が盛んであったことから日本での製造が決まった。そして生産を依頼されたのが、品質のよい人形の衣装を世に送り出していた株式会社国際貿易。
 そしてマテル社から来日したデザイナー、シャーロット・ジョンソンの助手に、国際貿易に入社したばかりの著者・宮塚に白羽の矢が当たる。
 本書ではそんな著者の、バービー誕生秘話や制作奮闘記などが、当時のまだまだ男社会だった日本の社会、日本とアメリカの文化の違いなどとともに語られる。

 たかがファッションドールと思うなかれ。ヴォーグの型紙を参考にするなど当時の最先端のファッションが作られていたのであり、口絵に並ぶファースト・バービーのドレスを眺めれば当時のバービードレスはファッションの歴史そのものであるとわかる。
 そして、小さな人形ならではの制作の難しさ。少しでも寸法が狂えば人形には大きすぎたり小さくて突っ張ったり、ミリ単位できっちりとした仕事をしなければならない、大量生産されれば小さなミスが全てを台無しにしかねないようななかなか厳しい世界なのだ。
 衣装のみならず、開発当時は人形のボディを均一に大量生産することも大変だったようで、なんと7割が不良品だったとか。当時の苦労が偲ばれるエピソードだ。
 また要所要所で当時の日本の玩具メーカー事情やその歴史、貴重なバービー制作過程の資料などのコラムがあり、人形好きな人間としてとても興味深い。

 宮塚はその後国際貿易を退職して人形衣装専門の縫製会社・宮塚縫製を設立、タカラのリカちゃん(1967)やジェニー人形(1986)の制作にも関わっている。
 終わりの方で宮塚がぽつりと漏らした「バービー技術やノウハウを受け継ぎ、いろんな意味でいちばん利用したのはタカラさんでした。タカラは私たちの動向をずっと見ていました(156頁)」という発言は、その後の日本の玩具産業を考えると興味深い。下請け業者との繋がりからファッションドール作りのノウハウをいちばん吸収したタカラが、その後の日本のファッションドール界を席巻していくのだから。そしてもしかしたら、バービーが日本で作られていなければ、今や女の子なら一度は手にしたことのあるだろうリカちゃん人形も誕生していなかったのかもしれない、と思いました。
 
 時代も関わる人形も変わったけれども人形制作に携わり続けた宮塚のこんな言葉に、彼女が人形を愛してやまない心情が出ている気がした。

 「人形は口をきかない。だから好きです。
  どんなところにいても、人間関係のややこしことは発生します。でも、バービーにはそれがない。(153頁)」

 それは、私自身にとっても人形に惹かれる大きな理由のひとつであるなぁと思ったのでした。
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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
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本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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