スポンサーサイト

--.--.-- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

田丸理砂「髪を切ってベルリンを駆ける!」

2011.08.14 23:54
髪を切ってベルリンを駆ける!―ワイマール共和国のモダンガール (Ferris Books (17))髪を切ってベルリンを駆ける!――ワイマール共和国のモダンガール (Ferris Books (17))
(2010/09/10)
田丸 理砂

商品詳細を見る

 第一次大戦後のワイマール共和国時代(1919~1933)のベルリンに登場し街を闊歩した「モダンガール」たちの姿を、当時の女性作家たちは文学作品でどう描いたのか。
 20年代世界中の都市に出現したモダンガールの姿を、当時最先端をいっていた都市ベルリンに絞って追っていくと同時に、日本では殆ど知られていない当時のドイツの女性作家たちの作品を知る貴重な一冊でもありました。
 モダンガール。
 断髪でほっそりとした肢体にストンとしたラインの服に丈の短いスカートをまとうその姿は、今見ても斬新でスタイリッシュで、それ以前の服飾文化とはまるで違う世界から出てきたかのよう。時々この時代のファッションのリバイバルが起こるのも納得してしまう、不思議な輝きがあります。
 彼女たちが登場した1920年代は、都市部では週日働き週末は休むという生活形態が出来上がり交通網の発達や映画やダンスホールなどのレジャーの充実、メディアの発達などなど、現在の消費社会につながる諸事が出来上がった時代でした。
 新しく変わっていく都市空間の中で、若い女性も労働力として求められるようになる。オフィスのタイピスト、デパートガール、バスガールなど、ニューヨーク、パリ、そして東京などの大都市を颯爽と駆け抜けるその姿こそ、当時の若い女性の憧れの的「モダンガール」でした。

 とりわけ第一次世界大戦後のハイパーインフレーションに襲われていたドイツでは女性の社会進出が顕著で、本書ではそんなドイツの首都ベルリンのモダンガールの姿を、イルムガルト・コイン(Irmgard Keun:1905~1982)、マーシャ・カレコ(Mascha Kaleko:1907~1975)、クリスタ・アニータ・ブリュック(Anita Christa Bruck:1899~1958)、ガブリエレ・テルギット(Gabriele Tergit:1894~1982)、ヴィッキィ・バウム(Vicki Baum:1888~1960)、マリールイーゼ・フライサー(Marieluise Fleiβer:1901~1974)ら当時の女性作家が残した文学作品を通して追っていく。
 彼女たち自身がベルリンで働くモダンガールでもあって、タイプライターとして働くことの多かったことが、彼女たちを作家にさせるきっかけになったようだ。

 中でもイルムガルト・コインの「偽絹の女の子」が、とりわけ興味深くて読んでみたいと思った。
 何故ならそこにはモダンガールである主人公が語る夜のベルリンの姿が描かれているから。
 20年代、あるいはアール・デコ期の象徴的存在として認識されているモダンガールだが、描かれ語られた彼女たちはあくまで当時のモダン都市を彩るひとつのパーツとして、男性側から鑑賞されている存在にすぎなかった。そのモダンガールが自らの都市生活、それも消費者として夜を愉しむ主体として描かれているとなると、これは当時の本当の意味でのモダンガールを知ることのできる貴重な作品だと思う。
 とはいえ、不朽の名作映画「グランド・ホテル」の原作者であるヴィッキィ・バウムを除けば、彼女たちは忘れられた存在だ。欧米では近年のフェミニズム・ブームの中で再発見され徐々にその作品も紹介されているようだが、日本ではまるで聞かない。代表作だけでも「ワイマール時代の女性作家集」みたいなかたちで誰か編んでくれないかなぁと切に願います。

 肩肘張って男社会を渡ってきたひとつ前の世代に比べて、モダンガール世代はもっとあっけらかんとしている。その姿は何処か「かわいい」を共通語に女の子主体のファッションや生き方を楽しんでいる現代日本の「女子」たちの姿に似ている気がしなくもない。
 そして「若さ」あるいは「少女のままでいること」が共通項としてあること、それが限界を作り出していることもそっくりだ。
 レビューに出てくる笑顔で群れていた女の子たち(ガールと呼ばれていた)と、自立した女性(こちらはガルソンヌ)とは微妙に違うとか、一口にモダンガールといってもまだまだ階級社会だった当時は属する階級で見方も変わるとか、決して一辺倒ではなかったことが興味深い。
 また、ワイマール期の女性たちによって作られた同性愛の匂いのする映画「制服の処女」が、女学生同士の緊密な関係「エス」が流行っていた当時の日本の女性たちの間で大ヒットしたとか、そんなエピソードもある。

 世界中を席巻したモダンガール現象だったが、その輝きは儚く短い。世界恐慌の始まりとファシズムの台頭、そしてやがて始まる第二次世界大戦の中、彼女たちの姿は消えていく。ドイツではナチスが政権を握る1933年以降、狂乱の時代は幕を閉じ、ベルリンからモダンガールの姿はなくなります。
 本当に儚い一瞬の輝きの中に存在したことが、私たちを惹きつけてやまないのかもしれません。
関連記事
スポンサーサイト

テーマ:ブックレビュー
ジャンル:本・雑誌

コメント

非公開コメント

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
About me

夜長姫

Author:夜長姫
お立ち寄りいただきありがとうございます。
本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
拍手、コメントなど頂ければとても嬉しいです。
※たいして頭の良くない人間が無い知恵絞って書いております。無断転用等はご容赦くださいね。

Category

CategoricTag

Comment

Recent entries

Search

Link

RSS

Archive

Mail Form

質問等ございましたらこちらからどうぞ

名前
メール
件名
本文

Counter

フリーエリア

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。