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森光子「吉原花魁日記」

2011.08.15 17:48
吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日 (朝日文庫)吉原花魁日記 光明に芽ぐむ日 (朝日文庫)
(2010/01/08)
森 光子

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 こうの史代さんのカバーイラストが目を引く本書は、1924(大正13)年に19歳で吉原に売られた著者(同名の女優さんとは別人です)が花魁・春駒として送った日々と吉原からの脱出までを綴った日記。1926(大正15)年に文化生活研究会から刊行されたものの復刊です。
 吉原や遊女関連の本は数多くあれど、そこで身を売っていた娼妓の残した記録はまるでない中で、この著作の復刊は貴重です。
 「大正デモクラシー」とか「大正モダニズム」など、大正期から昭和初期には自由で華やいだ印象がありますが、実際は都市と農村の格差が拡大し、労働問題が深刻化した時代であり、貧しい者には厳しい時代でした。
 本書の著者・森光子(女優で有名な方とは別人です)も、群馬の貧農に生まれ、父親の死で家の生活が立ち行かなくなったために1924(大正13)年、19歳で吉原の長金花楼に売られます。
 そこで娼妓・春駒として身を沈め、約2年後に脱出するまでの日々が綴られており、他に例のない、当時の娼妓の生の声を知る貴重な資料となっています。
 ただ、当時の検閲で、性的なことの書かれた部分だと思われる箇所などかなりの部分が潰されているのが残念なところ。

 読みながら、江戸文化の情緒だ名残だと言ってみたところで、そこにいる人間の自由や尊厳を根こそぎ奪っている時点で公娼制度はアウトだなぁと思いました。
 
 春駒を買った周旋屋、さらには彼女の母親さえも、等の彼女には都合のいい甘い言葉ばかりを並べて「吉原に行くのはいいことだ」と思わせる。春駒はその時まで自分がどういう身の上になったのか、知らないでいたのだ。
 遊女屋の稼ぎのシステムや働いても働いても巧みに稼ぎを吸い取っていくやり方、月経期にさえ客を取らせていた残忍さなど、そこで実際に働く娼妓の内側からの証言は遊郭という場に抱く幻想を見事に打ち砕いてくれます。
 京町1丁目にあった長金花楼は大店ではなく中店クラスの店だが、それでこの酷さなら、そのさらに下の小店クラスではどうなっていたのか、考えるだにぞっとしてくる。

 春駒は秘かに脱出を決意し、長金花楼に売られた約2年後に、雑誌等で知り敬愛していた柳原白蓮を頼って脱出に成功、その後は自由廃業します。
 彼女が自分が娼妓に身を沈めたことを受け入れたり諦めたりせず、その過酷な運命に抗い続けられたのは、彼女がかなり成長してから吉原に売られたことが影響しているかもしれません。ほんの幼い頃に売られて吉原で育った娼妓などには、そもそも「ここから逃げる」という考えがないように見える。高等教育は受けられずとも読み書きはでき、本をよく読んでいた春駒は、そもから吉原や公娼制度に対して反発の眼差しを持っていられた、それが彼女が生き地獄から逃げる原動力になったのだと思う。
 けれども吉原から逃れて、晴れて自由のみとなった後も彼女は決して幸せではなかったようです。晩年の彼女の消息は不明のままです。
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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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