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バビロンの陽光

2011.09.04 23:53
映画「バビロンの陽光」 バグダッド出身のムハンマド・アル=ダラージ監督の映画「バビロンの陽光」観てきました。

Story> フセイン政権崩壊から3週間後、2003年のイラク北部クルド人地区に暮らす老いた母は、12歳の孫アーメッドを連れ、戦地から戻らない息子を捜す旅に出る。少ししか現金を持っていない祖母と少年は、ヒッチハイクをしながらさまざまな出会いと別れを繰り返し、過酷なイラクの現状に押しつぶされそうになりながら砂漠の中を進むが……。

 少年と祖母が辿る古都バビロンまでの900キロに及ぶ過酷な道程と、そこで出会う人々との触れ合いを通してイラクの今の姿を映し出した佳作です。
 舞台は、アメリカ軍の侵攻によってフセイン政権が崩壊して3週間後の混乱期にあるイラク。
 戦地に赴いたまま戻らない息子イブラヒムを探すため、年老いた母は孫のアーメッドを連れてイラク北部からイブラヒムが収容されているナシリヤ刑務所を目指す旅に出る。

 ふたりはアラブ人ではなくクルド人。
 クルド語しか理解出来ない祖母と拙いながらもアラビア語のわかる孫のアーメッドが、900キロにも及ぶ荒涼とした道程を進むのだ。
 ふたりは先々で出会った人々に助けられながら先に進んでいきます。ぶっきらぼうながらも結局は金銭を受け取ることなくふたりをバクダッドまで運んでくれたトラックの男。バクダッドの路上でタバコを売るたくましい少年。かつてクルド人を殺戮したことを悔いる元兵士。結婚後まもなく戦地に向かったまま消息不明の夫を探す寡婦。
 混乱しきった情勢下の中でもイラクの人々は温かく、時にはしたたかだ。倒されたフセインへの恨みつらみはもちろんだが、進駐して我が物づらで軍車両であたりを闊歩するアメリカ軍にも、笑顔で彼らには理解できっこないアラビア語で悪態をついたりするのだから容赦無い。悲嘆にくれてばかりではない彼らのたくましさに希望を見た気がします。
 彼らの助けを得ながら、ふたりはどうにかナシリヤ刑務所にたどり着くが、そこはすでに廃墟と化しておりイブラヒムの消息を掴めるものはなかった。
 それでも彼の生存を信じるふたりに勧められたのは、近くで発見された集団墓地に行くこと。
 フセイン政権崩壊後に発見されたこの集団墓地はおよそ300にものぼり、10万もの身元不明遺体が発見されているという。そして100万人を超すと言われるフセイン政権下での死者・行方不明者…。
 荒涼とした砂塵の舞う景色の中、砂に埋もれた白骨化した夥しい数の遺体が発見されて、嘆く母親や寡婦たちの姿に思い現実を突き付けられます。
 アーメッドたちのイブラヒム探しの旅も、その様相を変えていく。
 集団墓地に向かう途中、集団墓地から搬送されていく柩の行列とすれ違い、それを見た祖母はイブラヒムはもう生きていないんだろうと悟るんです。そこから、イブラヒムとの再会を求める旅は、彼の遺体を探す旅に変わる。
 旅のはじめ、まだまだ腕白な少年だったアーメッドが、だんだん成長していくのが印象深い。彼は祖母が反対するにもかかわらず大人になったら「兵士になる」と言い続けていたのが、現実を目の当たりにして、やがて戦地に向かう前の父と同じように音楽をやるのだと言うようになるのだ。
 そして物語は、息子を求める母の旅から父を求める息子の物語へと引き継がれていく。
 父の形見である笛を響かせて、彼が抱くのはどんな想いなのだろう。

 「アブラハムの家」や「バビロンの空中庭園」など、かつてイラクで繁栄した文明の名残というべき遺跡が所々で姿を見せ、豊穣で輝かいい時代を思わせます。けれども今の彼の地は、聖書に描かれた楽園のような世界ではない。そのことに胸が詰まって、この悲惨な現実が現在進行形のものなのだと思わせられました。
 人災でこんな悲劇を作ってしまうのは、あまりにも愚かしいです。
 フセイン政権崩壊から9年、イラクのあの少年はどう成長し、いま何を思っているのだろうか。
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夜長姫

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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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