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「ファウスト」ゲーテ、荒俣宏訳

2011.10.11 23:51
ファウストファウスト
(2011/09/17)
ゲーテ

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 荒俣宏による、ハリー・クラーク(Harry Clarke,1889~1931)挿し絵で読む海外文学第三弾は、ゲーテの「ファウスト」!
 「アンデルセン童話集」「ペロー童話集」と続いたのでやってくれるかも、と期待はしていましたが、これが日本で刊行されるとは思ってもみませんでした(笑)
 この作品こそがハリー・クラークの絵描く世界に最もよく合った最高傑作じゃないかと。
 荒俣訳の「ファウスト」も読みやすくていいです。
 因みに第一部のみの内容です。
 ダブリン生まれのハリー・クラークはもともとステンドグラスのデザインをしており、1916年に刊行された「アンデルセン童話集」の挿し絵を担当して以来、気鋭の人気挿絵画家となった人物。
 「ファウスト」ではクラークは、カラー8点にモノクロ画と2色刷り(本書ではモノクロ印刷になっています。残念;)70点以上を描いています(1925年刊)。

 そしてこの「ファウスト」こそ彼の本領が発揮された作品だと思います。
 これまでに刊行された童話集では、メルヘンチックな世界を引き立たせていたカラー画の方がモノクロ画よりも印象的でした。ステンドグラスさながらの「アンデルセン童話集」の「おやゆび姫」や「雪の女王」、ロココな雰囲気の色合いをした「ペロー童話集」の「眠れる森の美女」や「シンデレラ」…。
 どれも御伽の世界に誘ってくれます。

 けれどもこの「ファウスト」はモノクロ画が際立っている。
 クラークの絵は空想と溶け合うかのような装飾が特徴的ですが、この作品ではそれが登場人物の心理や感情を表す働きをしていてどてもスリリングでドラマチック。ほとんどグロテスクすれすれのところで作中の登場人物の状況を表現しているのを見ると、「ファウスト」という物語が孕む怖さや狂気が伝わってきます。
 1925年の作品なので、アール・ヌーヴォー風ではなくアール・デコ調の仕上がりで、だからこそ白と黒のコントラストが引き立っています。「ファウスト」の内容とも相まって幻想的な雰囲気に溢れており不穏な気配がしているのは何処か60年代のサイケデリックっぽい。というか、もともとサイケデリックがこのあたりから影響を受けた上で誕生しているのですね。すぐにビアズリーの名前が上がりますが、私は実はクラークの影響もかなりのものだったのではとこの「ファウスト」を見て思いました。
 もちろんカラー画も素晴らしく、童話の華やいだ雰囲気とは違う何処か不穏さの漂う色合いで物語を引き立てています。
 
 「ファウスト」本編も、読みやすい訳ですいすい読めます。
 本書は原典からの直訳ではなくクラークが挿絵を描く際に参考にしたというジョン・アンスター(John Martin Anster;1793~1867)の英訳版からの訳。
 本というのは原典から外国語に訳される過程でかなり手が加えられていくものだったようで、原典訳にクラークの挿し絵を付けようとすると街頭の場面がないなんてこともあるため、敢えてクラークが参考にしたものから訳されたのだそうです。
 そのアンスターが英語に写す際に原典の曖昧な部分をかなり直接的、説明的に書いたために、原典ではぼんやりつかめなかった箇所もはっきりわかるようなものになっている印象です。
 賛否両論ありそうだけれども、私はこの「ファウスト」は好きだ。実は「ファウスト」は若い頃に読んだことがあるんですが、池内紀によるかなり砕けた訳で読んだにもかかわらず曖昧な部分が多くて(というか理解力がなくて;)まるでわからなかった。けれどもこの「ファウスト」にその手のストレスは一切なくて、ああこんなに深くて面白いお話だったのかと今更気が付いたのでした。。
 博識な荒俣氏の丁寧すぎる訳注も、物語の理解を深めるカギになったと思う。ほんと丁寧で、そんなことまで聞いてないよーなことまで書いてあります(笑)。原典にない箇所や変更された箇所への言及もばっちりあるのも有難い限り。
 まぁただ、いくら今風に訳したにしてもイケメンはどうかと思いますけどもね;あと10年くらいたったら死後になってそうな単語じゃあないですか(苦笑)。

 ともかく購入した当初はクラークの挿し絵を堪能できたらいいやと読むつもりはなかったんですが(汗)、気がついたら必死でページを繰ってました(笑)。
 ファウストとメフィストフェレスの賭けの行方に、まるでものの善悪の区別も付かない少女のようなマーガレット(グレートヒェン)の運命に、どんどんのめり込んでしまいました。クラークの挿し絵が迷宮の奥へ奥へと導いてくれたのは言うまでもありません(笑)。
 欲を言うなら、クラークの挿し絵ともども第二部も読んでみたかったです。
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夜長姫

Author:夜長姫
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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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※たいして頭の良くない人間が無い知恵絞って書いております。無断転用等はご容赦くださいね。

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