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「王妃に別れをつげて」 シャンタル・トマ

2013.01.29 23:08
4560071802王妃に別れをつげて (白水Uブックス 180)
シャンタル トマ 飛幡 祐規
白水社 2012-11-13

by G-Tools

少し前に映画「マリー・アントワネットに別れをつげて」を観てきました。
内容は正直期待したほどではなかったんですが(汗)、マリー・アントワネットに心酔している朗読係の少女シドニー・ラボルドという王侯貴族側でも民衆側でもない、当時のヴェルサイユ宮殿に仕えていた裏方の人間の視点からフランス革命勃発を描いているのが新鮮で興味深かったです。

気になってこの原作も読んだんですが、内容が全然別ものですね(笑)。個人的にはこちらの方が好みです。
著者のシャンタル・トマは18世紀フランス文学の専門家でもあり、これが初の小説なのだとか。そして文学専門家らしく虚実の織り交ざった不思議なお話でした。
映画とは違い、小説では革命を逃れた後ウィーンで暮らすシドニーが、かつてのヴェルサイユでの日々を回想し書き留めるという体裁になっていて、それ自体がマリー・アントワネットへの追悼でありまた別れを告げる行為になっています。
映画ではまだ年若い設定だった主人公のシドニーが原作ではマリー・アントワネットよりも年が上だったり、映画では計算高そうな印象だったポリニャック夫人が一族の繰り人形のように描かれていたりと、先程も書きましたが細かいところまで映画とはかなり違う内容でした。
何より映画で濃厚だったレズビアンな気配がほぼありません。シドニーはマリー・アントワネットに盲目的に心酔しているけれども、それはあくまでも思慕であって恋慕ではないという感じです。
映画で年の若いシドニーが歴史編纂官のモローと意気投合している姿に違和感があったんですが、あれは原作でのもう若くない彼女の交友関係をそのまま移したせいだったんだなと思いました。

革命勃発時のヴェルサイユ宮殿での不穏な夜の描写は、映画とは違ったかたちでとても印象深いです。
王侯貴族や革命を起こした側から描かれたものは数多くあるフランス革命ですが、シドニーたちのような立場の人々から描かれたものは見たことがなかったですから。

アガート・シドニー・ラボルドという人は、朗読係として確かに実在はしていたそうですが詳細は不明のようで、この物語で描かれているのは創作のシドニーです。
舞台となるヴェルサイユ宮殿に関してはほぼ当時に忠実に描かれているそうですが、読んでいてこっちの方がシドニーよりも創作なのではと思うくらいありえないことだらけというか、それは本当なんですかと思ってしまうことが多くて、何だか幻想的でした。
動物園のこととかヴェネチア出身の家族がゴンドラを漕ぐ大運河とか、かつてこれが現実としてあったことに驚かされます。18世紀末って、いろいろありえなくて面白いですね。
そして、そんなどこまでも人工的で豪奢なヴェルサイユ宮殿は、それゆえにまるで砂上の楼閣のように脆く見えてきます。

そんな、映画とは随分違った印象の原作でしたが、唯一同じだったのは革命勃発時の王妃マリー・アントワネットの孤独な姿でしょうか。
虚も実も取り込んだ極彩色の18世紀からより現実的になっていく19世紀に移る節目に、彼女は取り残されたのかもしれません。
この物語がいちばん描きたかったのは、ここかもしれないと思いました。


このお話を読んでいたら、ヴェルサイユ宮殿にも興味が出てきてしまいました。でもまさか実際に行けもしないので;いつもの如く関連書籍で補完(笑)。ひとり浸っていました(笑)。

4309761097図説 ヴェルサイユ宮殿―太陽王ルイ一四世とブルボン王朝の建築遺産 (ふくろうの本)
中島 智章
河出書房新社 2008-01

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入門編にはいちばんぴったりな一冊ですね。
ヴェルサイユ宮殿に関する基本的な記述とビジュアル両方が充実しています。

4422211765ヴェルサイユ宮殿の歴史 (「知の再発見」双書)
クレール コンスタン 伊藤 俊治
創元社 2004-06

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これも同じく。
ちょっとコンパクトですが、入手しやすい一冊です。

4560080720ヴェルサイユ宮殿に暮らす—優雅で悲惨な宮廷生活
ウィリアム リッチー ニュートン 北浦 春香
白水社 2010-06-23

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ヴェルサイユ宮殿での暮らしの実態。図版はほとんどありませんが、かなり詳細な内容です。
ヴィジュアル本では鏡の間などの華やかな部分にばかり目が行きがちですが、これを読むと華やかなのは見た目だけなんだな、と(笑)。慢性的な住居不足は深刻ですし、何より不衛生すぎます! ええ、絶対暮らしたくはないです(笑)。
そして、ヴェルサイユ宮殿も歴史の中でかなり様変わりしているんだなと実感できました。

4096806269楽園の都 ヴェルサイユ
三好 和義
小学館 2005-12

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日本から出ているヴィジュアル本では、これが価格もお手ごろでその絢爛豪華さをじっくり味わえるかと思います。
基本的にルイ14世とマリー・アントワネットにゆかりのあるエリアの紹介が中心。

0500286329The Private Realm of Marie Antoinette
Marie-France Boyer
Thames & Hudson 2006-09

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宮殿内のマリー・アントワネットの私室やプティ・トリアノン、フォンテーヌブローなどを紹介した本。
洋書ですが、ヴィジュアル面がとても充実しているので見応えがあります(サイズは上のとほぼ同じ)。何より、マリー・アントワネットのセンスの良さに感心してしまう本です。

3865217028Parcours Museologique Revisite
Robert Polidori
Steidl 2009-10-31

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ヴェルサイユ宮殿の25年に及ぶ改修を追ったヴィジュアルブック。
2010-2011のA/Wニューヨークコレクションで、ファッションデザイナーのジェイソン・ウーがこの本にインスパイアされた作品を発表したりもしています。
大き目のサイズで三冊箱入りと、重いし場所もとるしお値段も張りますが、普段は見られない改装過程や宮殿裏も見られるし、個人的にはヴェルサイユ宮殿のヴィジュアル本決定版です。
しばらくはこれでかつてのヴェルサイユ宮殿に思いを馳せてみます。
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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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※たいして頭の良くない人間が無い知恵絞って書いております。無断転用等はご容赦くださいね。

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