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高橋真琴「パリ~東京・さくら並木」

2010.10.16 22:11
完全復刻版 パリ‐東京・さくら並木完全復刻版 パリ‐東京・さくら並木
(2006/06)
高橋 真琴

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 可憐な少女の絵で有名なイラストレーター・高橋真琴の、1950年代の少女漫画の完全復刻版。
 貸本漫画として発表された「パリ~東京」と「さくら並木」復刻版二冊と、高橋真琴、嶽本野ばら、松本零士、藤本由香里各氏のインタビュー、解説の掲載されている小冊子の三点の豪華箱入り。  
 復刻された両作品とも1956~57年に発表されたもの。両作品の内容を、ざっと書いてみます。

◆パリ~東京◆
 
 人気挿絵画家の母と二人で暮らす真弓は、幼い頃に亡くなった父が生きていたらと、叶わぬ願いを抱いている少女。夏休みに友人たちと旅行に行こうと、花売りのアルバイトをしています。旅行の行き先も決まり、それを母に告げると何故か浮かない表情をします。きっと父と関係があるのだと思う真弓。やがて出発の日がやってきて真弓は友人たちと旅立ちますが、旅先で若い頃の父と母を知る人物と出会い…
 
 …というお話が、少女の憧れやお花やフランス語(余白にフランス語単語や会話文を挿入しているほどの力の入れっぷり)のふんだんに使われた画面で展開していきます。なぜフランス語?というと、戦後当時の欧米世界への憧れの表れなんだと思います。当時、いちばん人気のあった海外旅行の行き先はパリでした。
 真弓のお母さんを見出した作家が明らかに吉屋信子をモデルにしていたり、そのお母さんの人気挿絵画家っぷりが中原淳一のそれを彷彿とさせるところなどを見ていると、当時はまだまだ戦前の少女文化が身近だったんですね。


◆さくら並木◆

 大阪郊外の桜ヶ丘にある女学校・さくら女学院では、校内球技大会が行われています。卓球の部では、一年の由紀子、二年の亜矢子、三年の千景の三人による準決勝となり、図らずも学年対抗戦のような白熱ぶり。しかもこの三人は、優勝をめぐるよりも複雑な関係にありました。上級生の千景をめぐって、下級生の由紀子と亜矢子が争っていたのです。その二人の対決となり、由紀子が亜矢子を降します。続いて千景との対戦になり、熱戦の末、由紀子は敗れて千景が勝利します。その結果に同級生たちが、愛しい千景のためにわざと負けたのではないか、などと心ない陰口を囁き始め、由紀子を深く傷つけるのでした。しかもその陰口を出処はどうやら亜矢子。これが原因で千景との間にもわだかまりのできた由紀子の心は寂しく沈んでゆくばかり。このままではいけないと、由紀子はある行動に出ますが…
 
 こちらはいわゆる「エス」そのもののお話です。戦前期の女学生の間で、上級生と下級生の緊密な間柄である「エス」が流行したことは有名ですが、それが戦後の貸本漫画に取り上げられていたとは驚きでした。このことや「パリ~東京」の吉屋信子や中原淳一をモデルにしているのを見ていると、当時はまだまだ戦前の文化とつながっていた時代なんだな、と思います。当時のことを過去の出来事としてしか知らない私のような世代の人間は、どうにも戦前/戦後で時代がくっきり変わって、両者を分断して考えがちですが、普通に考えれば変わらず受け継がてれきたものがあって当然なんですよね。


 両作品を読んでいると、人物が画面からはみ出していたりイメージで物事を表現していたりといった少女漫画独自の手法が、もうすでに描かれていることに気が付きます。お話の内容も、古風ですが少女漫画の王道で、高橋真琴がその後の少女漫画に与えた影響というのはとても大きいのではないのかと思います。そして彼を通して、戦前の少女文化との結び付きも見えた気がしました。
 高橋真琴が漫画を発表していたのは7~8年ほどの間で、彼の関心は漫画ではなく一枚の絵を描く事の方にあったようです。それは、「さくら並木」の星空のダンスシーンとかバレエシーンなど、時々絵物語のような描かれ方のされた場面にも現れています。
 ところで高橋真琴の絵といえば、咲き乱れる花々に囲まれたお姫様とか、星がきらきらと瞬いてる大きな瞳などをイメージすると思いますが、花はともかく瞳の中の星は、この頃の作品にはまだ見られません。あれが高橋真琴の描く少女に現れるのは、もう少し後のことのようです。
 ところでこの本、そろそろ在庫が少なくなっているようですね。アマゾンではもう在庫切れになっていますし、店頭でもとんと見かけません。まだ入手可能なサイトへのリンクを貼っておきますので、よろしければご参考下さい。
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夜長姫

Author:夜長姫
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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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