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桜井俊彰 「イングランド王国前史」

2010.11.11 22:57
イングランド王国前史―アングロサクソン七王国物語 (歴史文化ライブラリー)イングランド王国前史―アングロサクソン七王国物語 (歴史文化ライブラリー)
(2010/10)
桜井 俊彰

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 ローマ人の去った5世紀半ばから10世紀の統一イングランド王国成立まで続くアングロサクソン人の「七王国(へフターキー)」時代のブリテン島の歴史を、ケント、イーストアングリア、ノーサンブリア、マーシア、ウェセックス各王国を取り上げながら綴った一冊。
 まったく知らないエリアの話なだけに、壮大なエンターテイメント作品を読んでいるような面白さでした!
 始まりは、ローマ撤退後のブリテン島で北方の「蛮族」ピクト人の南下に恐れをなしたブリトン人(先住のケルト人)が、ローマに援軍を要請するところから。フン族のアッティラ相手にそれどころではない状態のローマに断られて途方に暮れたブリトン人は、今度は傭兵としての能力の高いユトランド半島のアングロサクソン人に助けを求めます。これを承諾したアングロサクソン人は次々にブリテン島に上陸、そのまま定住してやがてブリトン人にかわってかの地を支配、自分たちの国を築きます。いわゆる「七王国(へフターキー)」時代です。
 本書ではその七王国時代を、ノーサンブリアの修道士ベーダ(672~735)著「イングランド人民の教会史」とアルフレッド大王時代(871~899)のウェセックスで編纂された「アングロサクソン年代記」という、日本で言えば「古事記」や「日本書紀」的書物を元に追っていきます。ですからまぁ、始まりの辺りは歴史というよりも伝説に近い。例えば、ケントに定住したアングロサクソン人を駆逐しようとブリトン人を率いた人物が、あのアーサー王の原型となった人物だったり。これを読んで、ああ、アーサー王ってこの時代のひとなのかと今更思い至りました。とはいえもちろんそれは、円卓の騎士が華々しく活躍する宮廷絵巻ではなくて、この時代の叙事詩「ベーオウルフ」のような、華美さとは無縁の勇猛な戦士たちの世界のイメージした方が正確でしょう。その後時代が進んでも、現実なのか伝承なのかかなり曖昧な出来事が多くて、長らく七王国時代の実在性が薄かったのも納得のいく話です。それだけにこの時代唯一の遺構と言っていいサトン・フーの船塚発掘のエピソードは興奮しますね。
 ところでこの時代のブリテン島はキリスト教化が進んだ時代でもあって、キリスト教が浸透してゆくに従ってアングロサクソン人の精神性が変容していくのは興味深いです。
 
 この本を読んでいていちばん印象に残ったのは、この時代の人名の美しさです。正確に言うと外国由来ではない、アングロサクソン固有の名前。
 ヘンギスト、エシュ、エゼルベルト、エゼルベルガ、レドワルド、クウェンベルガ、イチェル、エグバート……。
 どこか不思議な響きのするものが多くて、ファンタジー小説を読んでいるような気分になりました。

 それにしても、七王国時代なんてアルフレッド大王が有名なくらいで、受験生かよほど関心のある人じゃないと知りもしなければ興味も持たないような地味なエリアの歴史を、こうしてまとまったかたちで読めるのは本当に嬉しい。同時期のヨーロッパ大陸の、メロヴィング~カロリング朝やゴート族やアッティラ関連の話ならちらほら見かけますが(まぁ、それでもかなりマイナーな扱いですけど・笑)、ブリテン島に関しては関連書籍がなかったんですよね。それだけ、当時のブリテン島は辺境だったということかもしれません。
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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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