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マッケン「白魔」

2010.11.30 23:37
白魔 (光文社古典新訳文庫)白魔 (光文社古典新訳文庫)
(2009/02)
アーサー マッケン

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 イギリスの幻想怪奇作家アーサー・マッケン(Arthur Machen 1863-1947)の短篇集。
 「白魔」「生活のかけら」『翡翠の飾り』より「薔薇園」「妖術」「儀式」の、本邦初訳を含む5編が収録されています。
 各作品のあらすじと感想は…

◆ 白魔 The White People ◆
 隠者アンブローズのもとを訪れたコットグレーヴは、緑色の手帳を渡される。そこにはある少女の残した不思議な話が綴られていた。幼い頃に乳母から聞かされた不思議な話に魅了されて育った少女は、ある時森に迷い込み、そこで「白い人」に出遭う。その不思議な美しさに惹かれるまま、妖かしの世界に導かれていく…

 …という、ある少女が妖かしの世界に取り込まれてく過程の綴られたちょっと怖いお語ですが、ところどころにイギリス、というかウェールズの民間伝承が織り込まれていて、それがこれをただの怪奇小説ではない不思議で神秘的なものにしています。
 ところでこれは、ふたとおりの読み方があるんじゃないかと思います。
 ひとつは書き手の少女と渾然一体となって話を追っていく方法で、もうひとつはあくまで第三者の視点で読んでいく方法。それは多分、少女にどれだけ共感・共鳴出来るかで別れてくると思うんですが、前者だと、これは奇妙だなと感じながらも最後まで「白魔」はきれいな「白い人」で起こっているのは魅了されてやまない神秘の物語、けれども後者なら最初から最後まで不気味なまさに「白魔」の領域に踏み込んだ誰かの物語、というように随分感じ方が違ってくるんじゃないのかと。
 私は前半までは書き手の少女に共感していたんですが、森の深みに踏み込み出てくる伝承の話の「怖さ」が深まるにつれて後者の視点で読んでました。特に人形の話は怖すぎです。

◆ 生活のかけら A Fragment of Life ◆
 ロンドンで銀行員として平凡な生活を送るダーネルは、親戚からの寄贈金10ポンドの使い方を巡り妻と論議する日々を送ることになる。それがやがて、彼を故郷であるウェールズの森へと回帰させてゆく。

 始めの方は、主人公ダーネルの生活など所帯染みた日常が書かれていて、先の「白魔」直後にこれは? と戸惑ったくらい。ダーネルはそれに倦んでいて、妻が繰り返す現実的な話にも疲れて、徐々に自分の中にある、故郷ウェールズの神秘的な世界へと傾倒していくんです。ダーネルが語るロンドンを彷徨う話などは不思議で、この作者ならではの幻想的世界が描かれています。でもジャンルとしては幻想小説というよりは写実小説っぽいです。なのでそういうのを期待すると肩透かしかも。

◆ 翡翠の飾り Ornaments in Jade より ◆
 もともとは全十編の小品から成る本から、神秘の世界への目覚めを美しい韻文を散りばめて描いた「薔薇園 The Rose Garden」、魔女の秘儀を描いた「妖術 Witchcraft」、少女が神秘の世界へと足を踏み入れて行く「儀式 The Ceremony」の三編が訳出されています。中でも「儀式」は「白魔」をぎゅっと凝縮したような作品で、性的な匂いがするぶん取り込まれていく少女の危うさがよく出ている気がしました。

 全編通じて思ったのは、これはイギリスの小説なんだなぁと。
 フランスやドイツが舞台では、きっとこうはいきません。
 イギリスの、特にウェールズあたりの不思議な伝承には、まだそこに行けば妖精に会える気にさせられるし、ロンドンを包みこむ濃い霧は、いくらでも不思議な幻想を見せてくれそうです。これは、イギリスが生み出し得る幻想世界なんですね。
 …と書きつつ、唯一ブルターニュあたりなら近い幻想が見られそうな気もしてきましたが(笑)。 

 ところで私自身は神秘主義には興味がありません。神話や伝承は大好きですが、それもあくまでフォークロア的興味でしかないです。身内から真顔で「ちゃんと信心せなあかんよ」とか言われるところを思うと、心のからっからに乾いたつまらないリアリストかもしれません。
 なので、この本についても神秘主義云々のことなどはよく解ってません。そういうことに関心のある人が読むと、まったく違った作品かもしれませんね。
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ジャンル:本・雑誌

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夜長姫

Author:夜長姫
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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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※たいして頭の良くない人間が無い知恵絞って書いております。無断転用等はご容赦くださいね。

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