スポンサーサイト

--.--.-- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

トーマス・マン「ブッデンブローク家の人びと」

2011.01.04 19:55
ブッデンブローク家の人びと 上 (岩波文庫 赤 433-1)ブッデンブローク家の人びと 上 (岩波文庫 赤 433-1)
(1969/01)
トーマス・マン

商品詳細を見る

 明けましておめでとうございます。
 ドタバタと忙しい時間を過ごしていたら、年末のご挨拶もできないまま気が付いたら年が明けていてちょっと焦りました(苦笑)。年末に続いて年始もちょっと余裕が無いので暫くはこんな調子だと思いますが、本年もどうぞ宜しくお願い致します。

 さて、本年最初に取り上げるのはトーマス・マンの「ブッデンブローク家の人びと」。
 トーマス・マン25才の作であり、最高傑作の呼び名も高い名作です。ずーーーっと岩波文庫の重版かかるのを待っていた本作、2010年秋の一括重版で漸くの復活!待ってました。
 上中下の全三巻で、19世紀北ドイツのあるブルジョワ一族の4代にわたる衰亡のドラマが、当時の社会背景と連動して描かれる。
 四代にわたると書きましたが、物語はトーマス(長男)、クリスチアン(次男)、アントーニエ(長女)の三兄弟を軸に展開していきます(もう一人、末妹にクララがいますが彼女はほとんど登場しません)。

 始まりは、彼らの祖父であるヨハンが移り住んでで間もない邸宅で開いたパーティーの場面。その豪華な様子や引きも切らない訪問客(もちろん街の有力者)の姿に、一族の伝統と繁栄ぶりが伺えます。けれども徐々に一族の衰退の兆し始める様子が兄弟の父ジャンの代から長兄トーマスの代へと移り変わる中で描かれ、トーマスの息子ハンノが若くして病死することでブッデンブローク家は途絶えてしまう。
 兄弟の父ジャンとトーマスが働き盛りで(たぶん疲労で)唐突に亡くなったこと、クリスチアンの浪費癖やアントーニエの二度に渡る結婚の失敗(詐欺とか浮気とか)と不運に見舞われたことに加え、一族が没落の途を辿ったのは、代を追うごとに商人に相応しい堅実健康なものに変わって芸術嗜好の強い頽廃的なものが強くなってしまったからだろう。ハンノのワーグナー音楽への傾倒とかトーマスのニーチェ哲学への共感などを見ていると、大きな商会を運営していく人間はあまり深くはまり込むものではないのかもと思わざるを得ません。個人的には、繊細なハンノ少年の不安感に苛まれる感じはとても共感できますが。
 二度出戻ったことで図らずも一族の最後を看取ることになるアントーニエは、プライドが高くて誰よりも一族の輝かしい歴史を誇りに生きていた女性で、この物語のヒロインと言うべき存在。彼女の辿る人生がとてもドラマチックで、それを追っているだけでも充分に楽しめる。若い頃の恋は実るどころが邪魔をされ、その末に好きでもないどころかむしろ嫌悪している相手と結婚する羽目になり、なんとそれが詐欺で…、と、湿っぽい展開になりそうなのに、彼女の負けん気の強さと天真爛漫な性格がそうはさせないところがいいですね。でも、二度目の結婚も浮気っぽい夫のために駄目になり…。まぁ、それでブッデンブローク家にまたしても出戻った結果、一族の最後を見ることになるわけだが誰よりもその役割に相応しい人だと思う。
 そして彼女の兄トーマスとクリスチアンの永遠の確執も、見ものと言っては何ですが、興味深いです。跡取りなだけに堅実なトーマスと、神経質で芸術愛好家で商売のセンスのまるでないクリスチアン、全く対照的な存在だからこそ、相手を認めるとか和解するとかは無理なのだろうな、と年を追うごとにエスカレートしていくふたりの仲違いっぷりに思いました。
 物語の中に、新参ものだけれどやり手のハーゲンシュトレーム一族というのが出てきます。彼らは没落していく一方のブッデンブローク家を横目に段々と頭角を現して遂には無視できない存在になるんですが、要所要所でブッデンブローク家没落の片棒を担ぐような役割をやっている、非常にイヤな奴らです。けれどもブッデンブローク家からは失われていったしたたかさやある種の嗅覚の良さを兼ね備えていて、大商人としてのし上がって行くにはそういうものは不可欠なのかもなぁと。このふたつの家を対比させてゆくマンのやり方はさすが。
 
 それにしてもこれが25才の作とは、トーマス・マンの早熟ぶりには目を見張る思い。マンの生家をモデルに書かれたとか。マンといえば日本では「魔の山」とか「ヴェニスに死す」が有名だが、本国ドイツでは本作が一番読まれているらしいです。

ブッデンブローク家の人びと 中 (岩波文庫 赤 433-2)ブッデンブローク家の人びと 中 (岩波文庫 赤 433-2)
(1969/01)
トーマス・マン

商品詳細を見る

ブッデンブローク家の人びと 下    岩波文庫 赤 433-3ブッデンブローク家の人びと 下  岩波文庫 赤 433-3
(1969/11)
トーマス・マン

商品詳細を見る
関連記事
スポンサーサイト

テーマ:ブックレビュー
ジャンル:本・雑誌

コメント

非公開コメント

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
About me

夜長姫

Author:夜長姫
お立ち寄りいただきありがとうございます。
本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
拍手、コメントなど頂ければとても嬉しいです。
※たいして頭の良くない人間が無い知恵絞って書いております。無断転用等はご容赦くださいね。

Category

CategoricTag

Comment

Recent entries

Search

Link

RSS

Archive

Mail Form

質問等ございましたらこちらからどうぞ

名前
メール
件名
本文

Counter

フリーエリア

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。