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エーコ,カリエール「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」

2011.02.06 21:05
もうすぐ絶滅するという紙の書物についてもうすぐ絶滅するという紙の書物について
(2010/12/17)
ウンベルト・エーコ、ジャン=クロード・カリエール 他

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 記号学者であり小説家のウンベルト・エーコと脚本家ジャン=クロード・カリエールによる、書物をめぐる対話。書物をこよなく愛するふたりの会話はいろんな意味で示唆に富み、飽きることが無い。コーディネーターはエッセイスト、ジャン=フィリップ・ド・トナック。
 本好き、古書愛好家、アンチ電子書籍派はもちろん、そうじゃない人にも手に取ってほしい一冊。きっと紙の書物が愛おしくなるはず。
 本当はエーコの「バウドリーノ」を先に読もうと思っていたんですが、気が付いたらこっちに手が伸びていました(笑)。
 フランス語の原題「N'pspérez pas vous débarrasser des livres」は、直訳すれば、本から離れようったってそうはいかない、という意味(訳者のあとがきによる)。
 出たタイミングもタイミングだし、邦訳のみでは紙の書物愛好家による電子書籍隆盛の現状に警鐘を鳴らす内容かと思いきや、碩学なふたりに書物について語らせたら、無論話はそんなところに留まりません。古書や写本への愛着、検閲、果ては己の死後に残る蔵書の行方まで、尽きることがありません。
 
 まず「電子書籍元年」を越したばかりの我々日本人の関心をひく電子書籍に関しては、おふたりはのっけから「本は死なない」という結論を出していますので、書物愛好家は安心してよいかと(笑)。
 これ、冷静になって考えてみれば当然なんですね。
 エーコは書物を、車輪のように「一度発明したら、それ以上うまく作りようがない(24頁)」代物だと言います。
 方や電子テキストは、まだまだ発展途上という事もあるでしょうが、記憶媒体の定まる気配がない。
 本ではなく音楽の話になりますが、私が物心ついた時にはレコードは遥か彼方(レコード愛好家の怒りを買うことを承知の上で白状するなら、私はつい最近までSPレコードとLPレコードの違いも知りませんでした)、カセットテープがいつの間にかCDに駆逐され、初めて車を買ったとき喜び勇んで当時登場したてのMDデッキを積むも、いつの間にか更にお手軽なデータのみのやりとりが主流になってしまった。たかだか四半世紀ほどの間に、この変化の速さは何なんでしょう。おまけにその速度は徐々に早まっていて、このままではいつか新しい記憶媒体の様式に慣れる作業に追いつかなくなるのでは…とヘンな心配すらしてしまいます。
 そしてふたりが危惧するように、長期停電でも起こればどうなるか。昔っから不安に思って仕方無かったのですが、どんなに高性能の最新型でも、電源が入らなければ何の用も成さないんですよね。そして、コンピューターウィルスの脅威。不具合の末に中のデータが消滅…なんてことになったら、、考えただけでも青褪めてきますね。いや、過去にパソコンのハードディスクがとんで冷汗かいた経験は、誰しも一度は味わったことがあるのでは。
 で、気が付いたときには永久不滅のはずだったものが再生できない、などという恐怖に陥る。
 翻ってこういう心配の一切無い紙の書物というのは、手にとってページをめくるという単純な動作だけで読みたいもの、あるいは必要な情報を得られるのだからよくできたものだなぁと改めて感服してしまうのです。
 こんなに手軽で便利なものが消滅するわけがない。したならば、それは文明の後退でしょう。
 そのことに、改めて気付かせてくれます。

 むしろ、ネットを通じてあらゆる情報が入手可能となりそれらを簡単に端末に記録してしまえるお手軽さに馴らされつつある我々にとって必要なのは「考えをまとめて結論を導く技術(エーコ、98頁)」であり、それを習得することを疎かにしたり軽んじたりしないことを考えるほうが大切なのかもしれません。

 そしてふたりの関心ごとは電子書籍のみは留まらず、書物について、時代も場所も縦横無尽に語りつづけるのですが…。
 あのエーコが、聖書や「千一夜物語」を読み通していないとか「戦争と平和」を読んだのは40歳になってからだとか、サッカレーの「虚栄の市」を読もうとして3回放り出しただとか言い出したときには驚きました。そんな、正直に告白しなくても、と思いつつ(笑)、何だかとても安堵感を覚えました。
 そして、カリエールの「本棚は必ずしも読んだ本やいつか読むつもりの本を入れておくものではありません。……本棚に入れておくのは、読んでもいい本です。あるいは、読んでもよかった本です。そのまま一生読まないのかもしれませんけどね、それでかまわないんですよ(382頁)」という言葉には、積ん読ばかりがどんどん増えて、遂には本棚から溢れている始末の私などは心底救われる思いです。
 
 それからもうひとつ激しく共感したのは、書棚に本を並べるときどういう配置にするか悩むという話ですね。
 ジャンルだけでなく、本は例えばCDやDVDのように規格に統一性がないので、書棚に整然と並べる、というのが至難の業(笑)。この本だって、エーコの小説の隣に並べるか他ジャンルに置くか、とても悩みます。スペースの確保が最大の課題の私などは、結局いちばん効率よく収納できるように規格別に並べていますが、これの横にそれは…、な棚が大量発生して、いつかは納得のいく配置に収めてやる…! と下らない野望をめらめらと燃やし続けています。が、それは未来永劫無理な話だな、と二人の会話を読んで思い至りました(今更?)。本というのは、そいういうものです。
 こんな取るに足らない私の書棚でさえ頭をかかえるんですから、二人の悩みは如何ばかり…と余計な心配をしてしまいました。

 本書はブックデザインが素晴らしく、書物単体としても心惹かれる一冊。ぜひ手に取って、この「書物」の魅力に引き込まれてみてください。
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テーマ:ブックレビュー
ジャンル:本・雑誌

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夜長姫

Author:夜長姫
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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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※たいして頭の良くない人間が無い知恵絞って書いております。無断転用等はご容赦くださいね。

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