スポンサーサイト

--.--.-- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

英国王のスピーチ

2011.03.09 20:41

 本年度アカデミー賞受賞で話題の「英国王のスピーチ」観てきました。

Story> 幼少の頃からずっと吃音に悩んできたジョージ6世(コリン・ファース)。厳格な英国王ジョージ5世(マイケル・ガンボン)はそんな息子を許さず、さまざまな式典でのスピーチを命じるが、吃音のために上手くいかない。ジョージの妻エリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)は、スピーチ矯正の専門家ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)のもとへ夫を連れていくが……。

 ジョージ6世の生き様を、「イギリス国王」の物語ではなくひとりの悩める人間として描き出した素晴らしい作品。イギリス映画の奥深さを堪能できました。
 
 大半の日本人はジョージ6世と聞いてもピンとこないんじゃないだろうか。
 知っていたとしてもせいぜいエリザベス女王の父王だという認識くらいで、本国イギリスでならともかくそうでない国のひとが彼の生き様を観ても何か感じるところはあるのだろうかと正直思っていました。
 なのに話が進むにつれ、この人選は上手いな、と感服。

 ジョージ6世の在位期間は1936年から1952年。調度、第二次世界大戦前後の混乱期に当たります。そのジョージ6世の、戴冠以前のヨーク公時代から国王となってナチスドイツへの宣戦布告を国民に向けて告げるラジオ放送を行うまでの姿が描かれています。
 ジョージは幼少の頃に、父ジョージ5世の方針で左利きやX脚を矯正させられ、それらからくる過度のストレスから重い吃音症になってしまう。ジョージ5世はそんな息子を許さず、容赦なく式典でのスピーチを命じますが、上手くいかない。ジョージの妻エリザベスが見つけた矯正師ライオネルとの出会いで、吃音を徐々に克服していくが、彼の苦悩はそれで終わらなかった。

 ジョージの兄ウィンザー公エドワード(ガイ・ピアース)は王太子の立場にあるにもかかわらず奔放というか軽率なひとで、離婚歴を持つ人妻ウォリス・シンプソンというアメリカ人を愛人にしている。わたしこの人嫌いなんですが(笑・スミマセン)、実直なジョージを通して眺めてみると、やっぱりそれはどうなのよと思うことしきり。いちばんぎょっとしたのは、ジョージ5世が亡くなった際にひと目も憚らす取り乱して、それをたしなめたジョージに対して「(ウォリスと)これでもう一緒になれない!」と嘆くシーン。父の死に動揺したのかと思いきや、それはないだろうと。エドワード8世となるも彼は結局周囲が断じて交際を許さないウォリスとの恋を選んで王の位を放棄してしまう。いわゆる有名な「王冠を賭けた恋」というやつですが、まるで共感できませんねぇ。
 まあいろいろ考えればあの大事な時期をエドワード8世に乗り切ることが出来たのかはビミョーなところだし、イギリスはジョージ6世という王を頂けて幸せだったとも言える。
 兄の、言ってしまえば超個人的な理由が元で、本来なら王になることはなかったかもしれないジョージが戴冠することになって、ジョージ6世が誕生するわけです。予期しなかった戴冠で、ジョージはまたも苦しむことに。

 そう、これは男らしくてマッチョな王様の偉大な業績を讃える類の映画ではなく、吃音というやっかいな持病に悩むどちらかと言えば地味な王様のお話なのだ。
 人間ジョージ6世は、魅力に富むというよりは親近感を覚えるひと。
 吃音に悩みけれども何とか克服しようとする姿は、彼もまた我々と同じ人間なのだと感じさせてくれるし、またこの映画に誰しもが共感を覚えられる普遍性を与えている、そう思います。
 そしてそんな彼が行ったスピーチだったからこそ、人びとの心深くに響いたのでしょう。

 ともすれば重苦しくなりそうな物語ですが、吃音矯正トレーニングのシーンや戴冠間近の場面など、矯正師ライオネルとのやり取りがコミカルでユーモアに満ちていて不思議な軽やかさを与えている。
 こういう絶妙なユーモアセンスは、イギリス映画ならではですね。

 それにしても、如何にも大英帝国王といった厳格な父王ジョージ5世でも、見方を変えれば恋に人生を捧げた情熱的な兄王エドワード8世でもなく、ジョージ6世が主役に添えられたというのが今の時代らしいというか。偉大な王の生き様や、愛する人のために破滅するようなドラマチックな純愛ものではなく、人間が人間として悩み前に進んでいく物語が、今は求められているんでしょうかね。アカデミー賞を受賞しただけに、世相を反映している作品でもあると思うのです。
 そうえば、もうひとつのアカデミー賞有力候補だった「ソーシャル・ネットワーク」も、他者とのコミュニケーションに支障をきたしていた人物の苦闘や葛藤が描かれていましたけれど、そういう作品が話題になり評価を受けているというところに、やっぱり今の時代の雰囲気が出ている気がします。

 ところで、ベートーヴェンの交響曲7番2楽章、よく映画に使われていますね! この映画ではいちばんの見どころであり聴きどころでもあるあの場面で流されたから、ぐ…っときました。ライオネルがまるでオーケストラ指揮者のように見えたあの演出も上手いと思いました。 
関連記事
スポンサーサイト

テーマ:映画レビュー
ジャンル:映画

コメント

非公開コメント

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
About me

夜長姫

Author:夜長姫
お立ち寄りいただきありがとうございます。
本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
拍手、コメントなど頂ければとても嬉しいです。
※たいして頭の良くない人間が無い知恵絞って書いております。無断転用等はご容赦くださいね。

Category

CategoricTag

Comment

Recent entries

Search

Link

RSS

Archive

Mail Form

質問等ございましたらこちらからどうぞ

名前
メール
件名
本文

Counter

フリーエリア

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。