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武田尚子 「鴨居羊子とその時代―下着を変えた女」

2011.03.26 19:16
新装版 鴨居羊子とその時代-下着を変えた女新装版 鴨居羊子とその時代-下着を変えた女
(2011/01/26)
武田 尚子

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 昭和30年代に髪を金色に染め、カラフルな下着を提案し、存在そのものがアートのようだった下着メーカー「チュニック」の創始者・鴨居羊子(1925~1991)の評伝が、新装版となって再登場。近代日本の女性下着の歴史とあわせて描かれた、なかなか興味深い内容。解説は近代ナリ子氏。
 本書は1997年に刊行されたものの新装版です。
 鴨居羊子新聞記者の父と典型的な「日本の母」であった母との間に、大正14年(1925年)大阪・豊中市で生まれている。画家の鴨居玲(1928~1985)は彼女の弟。
 その後父の仕事で金沢、京城へと移り住み、リベラルな父の影響を受け保守的な母への反抗を感じながら成長し鴨居羊子という人間は出来上がっていく。
 戦後、単身大阪へ出て新関西新聞社で働くようになり、そこで出会った森島瑛と共にやがて下着メーカー「チュニック」を創立する。
 著者は、鴨居を知る関係者たちへの丁寧な取材を繰り返して、この稀有なデザイナーの実像を追っている。
 
 「下着は白が当たり前」だった時代に彼女は、レース飾りを使わない、ピンクやブルーなどのカラフルな下着を提案。それらにはココッティ、キャミター、チューリップ・スリップ、スキャンティなど、全てに愛称が付けられていた。商品こうした愛称を受けて売り出すのは今でこそマーケティングの手法として広く浸透しているけれど、昭和30年代当時はまだまだ見られない方法だった。まして下着は実用品以外の何でもなかった時代、彼女の発想がどれほど突き抜けていたかがよく分かる。
 
 鴨居は生涯自由恋愛を貫くような、当時の女性にしてはかなり奔放なひとで、「チュニック」を始めた頃から髪を金色に染め、それは生涯のトレンドマークとなる。ところどころに掲載されている彼女のフォト、特に昭和30年代の彼女はいったいいつの写真!? と思うほど今っぽくてかっこいい。そんな彼女の理念が因習的下着から女性を開放し、そして下着を通して女性を自由にしようとしたのだろう。彼女のこうした因習的なものへの反発は、典型的な「日本の母」であった自身の母親への反抗によるところが多かったようだ。

 鴨居と同じく関西出身の下着メーカー、ワコール(創立当時は和江商事)の創始者・塚本幸一との対称性は、その後の両者の明暗も含めて興味深い。女性を下着によって自由にしようとする鴨居と、下着によって美しくしようとする塚本。女と男の違い、そして芸術家と商売人の違いというか。

 それにしてもアヴァンギャルド文化とか、当時の大阪は東京とはまるで違う魅力とエネルギーに溢れた街だったんですね。今の大阪も独自の文化を持つ都市ですが、当時の魅力と今のそれは、ちょっと違っているんじゃないかと思いました。

 あと、近代女性下着の歴史についても触れられていますが、服飾史の本は数多くあれど、下着の歴史について書かれたものは中々無いんじゃないのかと。昔はそうだったのかとか昔の人は苦労していたんだなぁとか、フェティッシュではない視点で女性の下着について語られています。
 そしていわゆる洋装下着が日本で本格的に普及してからまだ半世紀ほどの時間しか経っていないことに気が付かされて驚いたのでした。それ以前の日本の下着とは、腰巻や襦袢といった和装下着だったんだと。そして、著者の「今でも日本の女性が体を補整する下着を好むのは、ヨーロッパのような過酷なコルセットの時代をこの国が経験していなかったせいだ(28頁)」という指摘は鋭くこの国の下着文化を言い当てていると思いました。
 そして歴史上で繰り返されてきた「インナーのアウター化」が今も続いていることを再認識。単純に下着の歴史として読んでも面白いです。

 ところで私は、本書を読むまで鴨居羊子というひとを知りませんでした。「チュニック」は今も健在の下着メーカーですが、知る人ぞ知るという感じになっている今、知っているひとは少ないんじゃないでしょうか。世代の問題かもしれませんが、私も知りませんでした。著者の武田尚子氏はあとがきで、鴨居の評伝を書こうとした動機について、このままでは忘れされてしまうと危惧したからだと書いていますが、よくぞ書いてくださいましたとひたすら感謝。
 惜しいのはチュニックの作品が紹介されていないことですが、そこは色々難しかったようですね。そちらは河出書房新社から出ている近代ナリ子さん編集の「鴨居羊子の世界」をあたるとよいかと思います。
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