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E・M・フォースター「アレクサンドリア」

2011.03.27 19:03
アレクサンドリア (ちくま学芸文庫)アレクサンドリア (ちくま学芸文庫)
(2010/11/12)
E.M.フォースター

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 「眺めのいい部屋」「ハワーズ・エンド」などで知られるイギリスの作家E・M・フォースター(Edward Morgan Forster:1879~1970)による、古都アレクサンドリアの栄枯衰勢の物語。
 物語性のある小説を書き続けたフォースターらしい、歴史案内書にありがちな堅苦しさのない読み物としても楽しめる一冊です。
 映画「アレクサンドリア」を見たあとに、アレクサンドリアという街について書かれたもので何かいい本はないだろうかと探して、手に取ってみたのが本書。フォースターと地中海の古代都市、この取り合わせは興味深い。
 
 フォースターは第一次世界大戦中、国際赤十字に志願してアレクサンドリアの地に滞在ていた経験があり、本書はそれを元に書かれたもののうち、第一部の「歴史」を訳したもの。第二部の「案内」は、半世紀以上前の観光案内が書かれた内容で、今回は訳出されなかったとか。うーん、でもそっちも読んでみたい。

 アレクサンドリアという都市の誕生から20世紀前半のまでの歴史を、ギリシャ・エジプト時代、キリスト教時代、イスラム教時代、近代に分けて解説しているが、アレクサンドリアの心臓部でもある哲学についても詳細に書かれ、ただの歴史案内書ではない深みがあります。けれどもさすが物語作家のフォースターというべきか、読み難さは微塵もなく、上手い表現でこの都市を彩りながら読むものをアレクサンドリアへと誘います。

 街にその名を冠した建設者・アレクサンドロス大王からプトレマイオス家の支配、プトレマイオス最後の女王クレオパトラの悲劇、その後のキリスト教徒、イスラム教徒支配、そしてナポレオンの遠征…。
 アレクサンドリアを彩った人びとの栄枯衰勢のドラマに想いを馳せつつ(特にプトレマイオス朝のそれはいろんな意味で面白い)、エラトステネスやユークリッド、キリスト教のアリウス派とアタナシウス派の闘争など、いろんな所で、ああ、あれってアレクサンドリアでのことだったんだ、と今更気が付いたことが多くありました。どのくらい、この都市が豊かな知の土壌を持っていたのかと。名高いアレクサンドリアの図書館の果たした役割は、たぶん私たちが思っている以上に大きいんじゃないだろうか。そして、科学や哲学の分野では目覚しい発展を遂げた一方で、文学は、例えばプトレマイオス期には王家への忠誠やおもねりが全面に出るようなものしか育っていないなど、案外いい作品が出ていなかったとは意外。
 
 あと、面白いと思ったのがアレクサンドリアで誕生したというセラピス神。オシリス、アピス、ディオニュソス、ゼウス、アスクレピオス、プルトンなど、この街で共に生活していたギリシャ人とエジプト人のそれぞれ信奉していた神々が合わさって出来上がったこの神は、その後地中海中で広まったという。この異文化との共存と寛容の精神を失ったとき、輝かしい知の都アレクサンドリアの歴史は終わる。 

 それにしても…、ファロスの大灯台ってわりと最近まであったんですね。図書館は諦めるにしても、大灯台だけでも何とか現代まで残って欲しかった、などど、どうしようもないことを考えてしまいました。
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夜長姫

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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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