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カズオ・イシグロ「夜想曲集」

2011.04.12 23:18
夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 (ハヤカワepi文庫)
(2011/02/04)
カズオ イシグロ

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 カズオ・イシグロの書き下ろし短篇小説集が、早くも文庫版で登場です。
 音楽をテーマにした「老歌手」「降っても晴れても」「モールバンヒルズ」「夜想曲」「チェリスト」の5編を収録。
 予想以上にユーモアに溢れていて面白かったです。
 カズオ・イシグロといえば、ブッカー賞受賞作の「日の名残り」や映画化(現在公開中)した「わたしを離さないで」などの長編作品が有名ですが、短編も中々面白かったです。
 そうえば、彼の短編を読んだのはこれが初めて。
 短編なだけに話の骨組みが解りやすくて読みやすい印象でした。
 各物語の内容は、ざっと以下の通り。

◆老歌手
 ビング・クロスビーやフランク・シナトラを思わせる、今は老いて忘れ去られたかつてのスター歌手トニー・ガードナーが、昔ハネムーンで訪れたヴェネチアを、妻リンディと共に再訪する。そこで出会ったギター弾きの「私」に、ゴンドラに乗って窓辺に佇む妻に歌う歌の伴奏を依頼する。老歌手と妻は別れることになっていたのだ。

◆降っても晴れても
 夫婦間がぎくしゃくしている友人チャーリーに、妻エミリとの間をとりもってほしいと頼まれるレイモンド。ふたりとは学生時代からの付き合いの彼はしぶしぶ承諾するが、待ち受けていたのはとんでもない展開で…。

◆モールバンヒルズ
 ミュージシャン志望だが芽の出ない「ぼく」は、田舎のモールバンヒルズに戻って姉夫婦の所に居候、ふたりの経営するカフェを手伝う日々。鬱屈した思いを抱いているところへ、スイスから旅行にやってきた夫婦デュオがやってくる。なにやら上手くいっていない様子の夫婦は、けれども「ぼく」の音楽を褒め、励ましていく。

◆夜想曲
 才能はあるが醜男のテナーサックス奏者「おれ」は、妻とマネージャーの策略で整形手術を受けることに。手術後、包帯で顔がぐるぐる巻きになった状態でホテルに滞在していると、隣室にいた同じく整形手術を受けたセレブ・リンディ(「老歌手」のトニーの元妻!)と交流を持つようになる。ある夜ふたりは「夜の散歩」に出かけ、珍妙な経験をする。

◆チェリスト
 ハンガリー人の若いチェリスト・ティーボールが、イタリアの小都市にやってくる。そこでアメリカ人の「大家」だと言われている女性音楽家エロイーズと出遭い、彼女のホテルのスウィートで個人レッスンを受けるが…。
 

 イシグロ作品は、長編作品でもユーモラスな部分はありましたが、全弁通じて本作ではよりそれを感じました。特に「降っても晴れても」と「夜想曲」は、仕事帰りの電車の中で読みながら吹き出してしまったほど。そのままぐははは、とか笑い出さずにおくのに苦労しました(笑)。
 訳はいつもの土屋政雄氏ですが、あとがきに拠れば息子さんに大部分の下訳をしてもらってから仕上げに入ったのだとか。そのあたりも影響しているのかもしれません。

 タイトルのとおりテーマは「音楽」ですが、その他にも前作品に共通するものがふたつあります。
 まず、男と女、というか夫婦の危機。どの作品にもそれぞれに問題を抱えすれ違っては互いの歪を埋められずにいる夫婦が登場しています。それをけっして深刻にすることなくコミカルなタッチで描いています。
 もうひとつは音楽―というか芸術の才能。それに恵まれたもの、無いもの、見放されたもの、開花させられないもの。さまざまなかたちで「才能」に振り回されている人間模様が描かれています。
 「才能」について、特に印象深かったのが、一番最後の作品「チェリスト」に登場するエロイーズ。
 彼女は自分のチェリストとしての天賦の才を壊さないために「弾かない」のです。
 「チェリスト」は、時間の流れの描き方といいいちばんイシグロらしい作品だと思います。

 全体に、愉快だけれど何処か哀愁ただよう音楽が流れている、そんな読書時間でした。
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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
ジャンルは何でもござれですが、微妙な偏りがあるみたいでそれに流されがち。好みの合う方がいらっしゃれば大歓迎です。
本、というか文芸は物語のしっかりしたものよりは、迷宮に迷わせてくれるような作品が好み。映画は劇場鑑賞派です。
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