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アメイジング・グレイス

2011.04.27 23:49

 名曲の誕生と奴隷制度と闘った男の生きざまを綴った映画「アメイジング・グレイス」観てきました。

Story>18世紀末イギリス。奴隷貿易の悲惨さに心を痛める若きトーリー党議員ウィリアム・ウィルバーフォース(ヨアン・グリフィズ)は、志を同じくするウィリアム・ピット(ベネディクト・カンバーバッチ)と共に奴隷制度廃止を目指す。予想以上の苦戦を強いられやがて心労に陥る彼を支えたのは、師と仰ぐもと奴隷船長ジョン・ニュートン(アルバート・フィニー)の作曲した「アメイジング・グレイス」だった。

 何となく熱い感じの(どんなのだ)歴史映画かな、と思っていたら、予想以上に心に迫る名画でした。
 冒頭のシーンが、ウィルバーフォースという人物を見事に描き出しています。
 どしゃぶりの雨の中馬車を走らせていた彼は、途中動かなくなって横たわる馬に容赦なく鞭を振るう男に行き交う。雨に濡れるのもかまわず彼は馬車を降り、男に暫く待てば元に戻ると言って鞭を止めさせるのです。

 彼は弱い立場にあるものが虐げられるのに不眠症になるほど心を痛め、そして見逃すことの出来ない人間なのだ。
 そんな彼の人間性に惹かれ、やがて首相になるウィリアム・ピットは彼を奴隷制度廃止運動に目を向けさせ目覚めさせる。それは、けっして政治的駆け引きが目的ではない純粋な動機によるもの。ウィルバーフォースは奴隷制度、わけても奴隷船の実態の悲惨さにとても目を背けられなかった。重量オーバーするほどの数の奴隷を手足さらには首にも枷をつけた状態で押し込めた多くの船が、アフリカから大西洋を渡っているのだ。その大半が航海中に病気にかかり、海に投げ捨てられる。船からはいつまでも悪夢を物語る悪臭が消えない。
 ウィルバーフォースは、奴隷船の元船長で今はかつての過ちを悔いる男ジョン・ニュートンを師と仰いでいる。奴隷たちにもそれぞれにアフリカの美しい名があったのに我々はそれを奪った、というニュートンの言葉は忘れ難い。名曲「アメイジング・グレイス」は彼が懺悔の末につくり出した曲であり、ウィルバーフォースを支える曲でもある。
 
 彼らの活動は、大物議員チャールズ・ジェームズ・フォックス卿(マイケル・ガンボン)をも味方に引きこんで徐々に拡大していくかに見えた。けれども海の向こう、パリで革命が起きたことで暗雲が立ち始める。
 立憲君主制国家として国王を戴くイギリスでは、王室を文字通りひっくり返したフランス革命は容認しがたいものだった。
 ウィルバーフォースらが奴隷解放を叫ぶと、保守層はそこに海の向こうから流れる不穏な空気を読み込み、たちまち危険分子扱いされ始める。
 身の危機を感じた仲間たちはロンドンを離れ、運動は頓挫したかに見えた。
 そして、結局奴隷たちを救うことの出来なかったウィルバーフォースは、心を病み始める。
 そんな彼におせっかいを焼いた知人が、バーバラ・スプーナー(ローモラ・ガライ)という女性を紹介する。最初こそ互いに「大きなお世話だ!」と突っぱねていたふたりだったが、やがて距離が縮まり家庭を築く。それからは家族と共に過ごす穏やかな時か流れ、時代は19世紀へ。
 世の中が落ち着きを取り戻し、再び奴隷制度廃止を訴える時が来る。ウィルバーフォースは盟友ピットやかつての仲間と共に再び立ち上がる。そして、ちょっとした企みが功を奏し、見事に廃止にこぎつける。
 登場人物の着ている服や髪型(豪華なので必見です)に着目すると後期ロココからロマン主義へと変遷していることに気付き、ここに辿りつくまでにとても長い時間がかかったことがよくわかる。

 廃止が決まったとき、戦友チャールズ・ジェームズ・フォックス卿が口にする言葉が感慨深い。
「ナポレオンはベッドで休むとき、戦場での悪夢を見るだろう。だがウィルバーフォースは戦いに勝ったにもかかわらず、ああこれでもう奴隷船が行き交うことはないのだと安堵して休むことができるのだ」
 アメリカ独立戦争に従軍し、自らも負傷したフォックス卿だから言えた言葉だ。(因みにひょうひょうとした感じがいい味を出していた彼がいちばんのお気に入りです)
 そんなウィルバーフォースを讃えるようなラストの「アメイジング・グレイス」には、じんわり涙が出ました。

 18世紀末から19世紀初頭といえば、フランス革命とナポレオン戦争の時代でありそれにばかり目が行きがちですが、同じ時期のイギリスが奴隷制度廃止運動に燃えていたとは知りませんでした。そしてこれはもっと知られるべき歴史だと思いました。

 ところで本作は2006年公開の作品。
 こんなに素晴らしい映画なのに、日本では何故か5年も経った今頃になってのお目見え。正直、何故ここまで遅れてしまったのか理解に苦しみます。そしてこういういい映画をすぐに公開しない日本の配給会社に疑問を覚えました。いったい、何を基準に公開映画を選んでいるんだろう…。
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テーマ:映画レビュー
ジャンル:映画

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はじめまして。@aka と申します。
「銀璧亭」さんのブログで紹介されていたので、やって来ました。当方も本や映画が好きな人間です。レビューを参考にしようと、RSS を登録しました。
どうぞ、よろしく。

- http://ginnhekitei.cocolog-nifty.com/tando/2011/04/post-34c8.html

>@akaさん

はじめまして!
ご訪問&コメントありがとうございます。
その上、RSS登録までしてくださったなんて感激です!

「銀璧亭」のTandoさんが、何だかこちらが恥ずかしくなるような紹介文を書いてくださって、
果たしてこのブログがそれに応えられているのやら…と冷や汗なんですが(笑)、
今後もちょぼちょぼと書いていこうと思いますので、どうぞ宜しくお願いします^^

ところで@akaさんのブログを拝見させていただいたんですが、多方面のジャンルを網羅してらして、
むしろこちらが参考にさせてください、と思いました。
折々にお伺いさせていただきたいと存じますので、今後もどうぞ宜しくお願いします。
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本や映画や音楽の感想を新旧問わずマイペースに書いています。
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※たいして頭の良くない人間が無い知恵絞って書いております。無断転用等はご容赦くださいね。

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